永領寺は京都の外れにあり中坊進二が訪れたのは台風のおかげでした

その日は、京都から北のほうへ向かう特急列車に乗ってかつて居候をしていた高原のペンションへ向かう予定でした。台風が心配だったのですがうまくコースがそれたようで、何とか列車に乗り込んだのもつかの間、急に列車が止まってしまったのです。台風はうまくそれたのですが、その爪あとはしっかりと残されているようで、線路のあちこちに倒木があるということで、特急列車は一気に各駅となってしまったのです。各駅でもまだ動いている間は良かったのですが、福知山の駅で停まってしまい、にっちもさっちもいかなくなったのです。目指す高原はまだまだ先です。運転主に数時間は回復の見込みがないことを確認して、列車の中に荷物をおいたまま、改札の外へ出たのは食事を摂るためです。知らぬ街の中にぽつりとあったのが永領寺でした。永領寺という少々変った名であったため記憶に残っています。私は学生時代京都で暮らし、数々の寺社仏閣は訪ねましたが流石にこのお寺は寺好きの私も聞いたこともなかったのです。